陰謀の中心にあるのが、「ユダヤ人」。しかし、インターネットではそもそも聖書すら読まない人たちがやたらユダヤ人を語って陰謀解釈を楽しんでいます。スファラディユダヤ人は聖書に出ている血統のユダヤ人。アシュケナージユダヤ人は改宗してなったユダヤ人、と。そんな単純なことではありません。重要な部分が抜け落ちています。まずはアメリカを牛耳っていると言われている偽物ユダヤ人の話の前に聖書のユダヤ人を理解してください。
1. なぜアブラハムからユダヤ人とするのか。
創世記
12章第1節 その後、主はアブラムに仰せられた。「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。12:2 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。12:3 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」
この解釈は2つあります。
- ユダヤ人を通して世界の人々にそのことを伝えなさい。
- ユダヤ人だけが神の子である。
2. タルムードユダヤ人
白人ユダヤ人(アシュケナージ)はヨーロッパ各国で医療、科学、そして金融で社会貢献しようと努力し、ことごとく成果を上げてきました。本当に努力家だし、賢い。
理解していただきたいのは、
「ラビ的ユダヤ教徒のみがタルムードを経典としているユダヤ人である」
ということです。
タルムード=旧約聖書を更に詳しく書かれたもの、と解釈している方も多いのですが、実際は全く違います。これは聖書でもなんでもなく、ラビ的ユダヤ教徒(ユダヤ教の中の異端宗派、パリサイ派ともいう)が独自に作ったものです。
更に言うと、タルムードの権威を認めないユダヤ教の宗派も少なからず存在します。
その代表とも言えるのがカライ派で、モーセのトーラーのみを聖典としラビ文書の権威を認めていない。また、シャブタイ派(サバタイ派)の流れを汲むユダヤ教においては、むしろタルムードを否定するという立場をとっています。
ユダヤ人 = <タルムード信仰ユダヤ> + <タルムード否定ユダヤ>
さて、このタルムードはいかにして作られたか。
アブラハムが神から言葉を授かった時からその子孫をユダヤ人としてきました。
そのずっと後、ダビデ王が生まれ、その子、ソロモンでイスラエルの全盛期を迎えます。
その後、イスラエルは崩壊。イスラエル王国は北王国として知られるイスラエル王国と南王国として知られるユダ王国に分裂しました。原因は人々の経済格差と言われています。
その頃、アブラハムの子孫は12支族となっており、
イスラエル王国にはそのうちの10支族(ルベン、シメオン、ダン、ナフタリ、ガド、アシェル、イッサカル、ゼブルン、マナセ、エフライム、)が、
ユダ王国には2支族(ユダ、ベニヤミン)が
それぞれの国を作りました。
このユダ王国が新バビロニアに支配され、生き残ったユダヤ人はバビロニアに強制移住されました。かの有名なバビロン捕囚です。BC587
バビロニアの圧倒的な社会や宗教に囲まれる葛藤の中で、その影響を受けながら、それまでの民族の歩みや民族の宗教の在り方を徹底的に再考させられることになりました。宗教的な繋がりを強め、失ったユダ王国の首都、エルサレムと神殿の代わりに律法を心のよりどころとするようになり、神殿宗教であるだけではなく律法を重んじる宗教としての新しいユダヤ教の宗派を確立することになった。これが後の「タルムード」に繋がることになります。
ユダヤ教の新しい宗派(タルムード信仰)はユダヤ12支族のうちの「ユダ、ベニヤミンの中の一部の連中」から生まれた独自の宗教であるにすぎない。
それ以外のユダヤ人は
「新しい宗派を支持しない側に立つユダ、ベニヤミン(2支族)」と、
「新しい宗派を認めない他の10支族」
インターネットで騒がれているいわゆる「偽ユダヤ人」はこのタルムードに関係しているのでは?少なくともタルムードに関係ないユダヤ人はネットで騒がれているユダヤ人とは関係ないことを分かっていないと大けがします。
さて、その後、新バビロニアは崩壊し、2支族である42,462人のユダヤ人がペルシア領となったイスラエルの地に帰還し、サマリア地方にサトラップ(総督)が置かれました。しかし、イスラエルでは残りの10支族は姿を消しており、ユダヤ人(2支族)は小さな共同体のような形で生活するようになりました。→ 失われた10支族
(この後が陰謀論では注目されてませんが、私は一番大事なとこだと思ってますので、少し意識してください。あとで話が繋がります。)
- BC167年に、シリアの王アンティオコスは、ユダヤに対する徹底的な宗教弾圧を開始した。律法に従う生活が禁じられ、エルサレムの神殿にゼウス・オリンポスの祭儀を行なわせ、これに参加しない者や律法を守ろうとする者たちを処刑した。これはイスラエル・ユタヤ民族がそれまで歴史上経験したことのない最大の迫害であった。
- この迫害に対して、ハスモン家に属するマタテヤガ立ち上がり、ユダヤの独立戦争が始まる。これが<マカベアの反乱>である。BC165年、マタテヤの長子ユダの指揮の下にヘレニズム派の牙城であったエルサレムを奪還し、神殿を清めて以前の状態にした。この出来事は「宮きよめ」として、ユダヤ教における重要な年中行事の一つ「ハヌカ祭」の起源となった。これにより、ユダヤの独立時代(100年間)を迎えた。実に、BC587年のユダ王国滅亡後、約450年ぶりに独立国家として再生したのである。これ以後、BC30年のローマによる征服までをハスモン王朝時代と呼ぶ。BC63年、ローマの三頭時代(カエサル、クラッス、ポンペイウス)の一人、ポンペイウスが率いるローマ軍によってパレスチナは征服され、エルサレムは陥落。ポンペイウスは、エドム人(エサウの子孫)アンティパテルをユダヤの支配者に任命した。
- BC30ローマ帝政が始まる。初代皇帝はアウグスト(BC30~AD14)、
AD14~37はテベリオ)
ここでイエスが現れます。イエスはユダヤ人です。新しい宗派を否定し、それどころか酷く非難します。イエスを処刑したのは皮肉なことに、同じユダヤ人であるが、宗派を別とするあの一部のユダヤ人でした。
AD2世紀頃、イスラエルにおける異教ユダヤ教の共同体の長であるユダ・ハナシーがモーセが残した口伝律法を書物にします。ミシュナといいます。その裏には、それまでに二度のユダヤ戦争があり、ユダヤ教の危機があったためです。ちなみに、一般的なユダヤ教はモーセが残した書物「トーラー」と口伝律法で成り立っています。
ミシュナーにはさらにその解説が加わり、ミシュナーとその解説(ゲマラ)で成り立つタルムードが出来たのです。
ゲマラは当然統一できません。解説は、主観と理屈の固まりであり、結果、二種類のタルムードができました。
エルサレム・タルムード と バビロニア・タルムードです。
現在はバビロニア・タルムードがいわゆるタルムードと呼ばれているものです。
いずれにせよ、異なる宗派から生まれたものなので、タルムードを聖典としているのは、一部のユダヤ人であり、一般のユダヤ人にとっての聖典はモーセが残した「トーラー」だけです。
3.イエスの時代のパリサイ派ユダヤ人
イエスがいた頃、ユダヤ人の異端派律法学者たちは、社会的地位も高くなっていました。目の前に出たイエスを預言者として認めず、それどころか異端者扱いし、ついには処刑する手助けまでしました。ユダヤ人がイエスを予言者として受け入れない限り、神の言葉は「死」に等しいのです。
「一部の」偏った考えのユダヤ人たち(ラビ的ユダヤ教徒、パリサイ派)はもはや旧約聖書の教えとは関係のない教えを信仰するようになっていたのです。
以下が、イエス・キリストがパリサイ人に向かって言った言葉です。
マタイによる福音書第23章
13. 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、天国を閉ざして人々をはいらせない。自分もはいらないし、はいろうとする人をはいらせもしない。
14.[偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈をする。だから、もっときびしいさばきを受けるに違いない。]
15.偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたはひとりの改宗者をつくるために、海と陸とを巡り歩く。そして、つくったなら、彼を自分より倍もひどい地獄の子にする。
16.盲目な案内者たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは言う、『神殿をさして誓うなら、そのままでよいが、神殿の黄金(こがね)をさして誓うなら、果す責任がある』と。
17.愚かな盲目な人たちよ。黄金と、黄金を神聖にする神殿と、どちらが大事なのか。
18.また、あなたがたは言う、『祭壇をさして誓うなら、そのままでよいが、その上の供え物をさして誓うなら、果す責任がある』と。
19.盲目な人たちよ。供え物と供え物を神聖にする祭壇とどちらが大事なのか。
20. 祭壇をさして誓う者は、祭壇と、その上にあるすべての物とをさして誓うのである。
21. 神殿をさして誓う者は、神殿とその中に住んでおられるかたとをさして誓うのである。
22. また、天をさして誓う者は、神の御座(みざ)とその上にすわっておられるかたとをさして誓うのである。
23. 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。はっか、いのんど、クミンなどの薬味の十分の一を宮に納めておりながら、律法の中でもっと重要な、公平とあわれみと忠実とを見のがしている。それもしなければならないが、これも見のがしてはならない。
24. 盲目な案内者たちよ。あなたがたは、ぶよはこしているが、らくだはのみこんでいる。
25. 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。杯と皿との外側はきよめるが、内側は貪欲(どんよく)と放縦とで満ちている。
26. 盲目なパリサイ人よ。まず、杯の内側をきよめるがよい。そうすれば、外側も清くなるであろう。
27. 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは白く塗った墓に似ている。外側は美しく見えるが、内側は死人の骨や、あらゆる不潔なものでいっぱいである。
28. このようにあなたがたも、外側は人に正しく見えるが、内側は偽善と不法とでいっぱいである。
29. 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは預言者の墓を建て、義人の碑を飾り立てて、こう言っている、
30. 『もしわたしたちが先祖の時代に生きていたなら、預言者の血を流すことに加わってはいなかっただろう』と。
31. このようにして、あなたがたは預言者を殺した者の子孫であることを、自分で証明している。
32. あなたがたもまた先祖たちがした悪の升目(ますめ)を満たすがよい。
33. へびよ、まむしの子らよ、どうして地獄の刑罰をのがれることができようか。
34. それだから、わたしは、預言者、知者、律法学者たちをあなたがたにつかわすが、そのうちのある者を殺し、また十字架につけ、そのある者を会堂でむち打ち、また町から町へと迫害して行くであろう。
35. こうして義人アベルの血から、聖所と祭壇との間であなたがたが殺したバラキヤの子ザカリヤの血に至るまで、地上に流された義人の血の報いが、ことごとくあなたがたに及ぶであろう。
36. よく言っておく。これらのことの報いは、みな今の時代に及ぶであろう。
37. ああ、エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、おまえにつかわされた人たちを石で打ち殺す者よ。ちょうど、めんどりが翼の下にそのひなを集めるように、わたしはおまえの子らを幾たび集めようとしたことであろう。それだのに、おまえたちは応じようとしなかった。
38. 見よ、おまえたちの家は見捨てられてしまう。
39. わたしは言っておく、
『主の御名(みな)によってきたる者に、祝福あれ』
とおまえたちが言う時までは、今後ふたたび、わたしに会うことはないであろう」
だから世界中のクリスチャンはユダヤ人が心を改める日をずっと祈っているのです。
イエス・キリストがイスラエルにいた頃、失われた10支族はそこにはいなかった。
つまり、どこにいるか分からないままの失われた10支族はイエス・キリストのことを知りません。旧約の神の言葉だけを信じていたユダヤ人だということです。
4. 独り歩きするタルムードユダヤ人 と 失われた10支族
タルムードに書かれている内容に、「ユダヤ人だけが人間であり、それ以外はゴイ(ゴイム)、つまり、家畜である。殺しても構わない。」と解釈できる文があり、彼らは本気でそう思っています。まさに前回紹介した創世記第12章の「あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」の部分だけを都合よく解釈していたのです。
↑ のことなど、失われた10支族が知る由もありません。そもそも新しい宗派が生まれ、イエスが生まれて処刑されたことも。まして、異端宗派が新たにタルムードを作ったことなど全く関係のない話なのです。
ユダヤ人は大きく分けて2種類に。
A. タルムードユダヤ人
信仰するとユダヤ人になる、という教えで、後に世界中に増えていく
B. 否タルムードユダヤ人
トーラのみを信仰する血統ユダヤ人 失われた10支族と2支族内のA否定派
インターネットで騒がれているユダヤ人は、Aの信仰の基、血統に関係なく拡大していった人たちことを指しますが、その過程から陰謀論が始まるのです。